さて、上海日食篇後半をとうとう・・・。
以下の画像は、湯山のライブリポートなり〜。
もう、一ヶ月以上たっちゃって、そういえば週刊文春にも「日食ツアー残酷日記」のようなものが掲載されていましたが、それを下敷きにお読みになるのも一興かと。だって、上海のそれはとーってもクールだったんですもの。
日食を上海で観測することを大いに後押ししたのは、前編でお分かりのように、もっぱら食。なので、実際、すでに二日目にして気持ち的には終わっていることを心の奥底に発見した私は、これではいかん、と、猛然とロケハンを開始し、上海市南部郊外の上海植物園を射程に入れていたのですが、日食の朝、なんと上海は雨だった・・・。
ということは、熱帯の大自然の中で天体ショーを見る、という昨日、ピーカン時に想像していた環境にはならないわけです。それに加え頭をよぎったのが、雨の上海→交通渋滞加速必須→帰りの飛行機ロストの恐れ、マジであり、ということなんですね。
頭を即切り替えました。「そうだ、どうせ上海に来たのならば、都会のど真ん中で観測、でしょう。ど真ん中の人民広場でどーだ」ということで、スーツケースとともにタクシーで人民広場に。そう、この雨も「ブレードランナー」の酸性雨と考えれば、ものすごく、サイバーSFっぽいじゃないかい。
時折、道の片隅や公園に人々が集まって、太陽を眺めていたりしますが、なーんか、ユルーイ感じ。
これ、後でも思い知るのですが、上海の人々はこの世紀のタイミングにものすごくクール対応なんですね。日本だったらヒステリックなまでにテレビやマスコミが騒ぐはずなのに、街中にポスターがちょこっと張っているだけ。
空は相変わらずの雨の曇り空なのですが、ふと、後部座席でのけぞって、日食メガネを通してみたら、おおっ、太陽がほんとに欠けているではないか! もう、日食が始まっている。と、周りを見ると薄暗いことは薄暗いのですが、これ、雨だからなのか、日食だからなのか、ようわからん。
人民広場に着いたころには雨は本格的になっていて、非常にブレードランナー的なイイ感じのでかい電飾掲示板を備えたビルの対面の木陰に陣取ることにしました。周りにはやはり日食ウォッチングの人々はいますが、雰囲気は「ちょっと、見物しますか」ってな感じのユルーイ物見遊山なのがクール。町中は普通に車が走っていて、もの凄く、日常ではあります。
雨雲の下ならこんなもの、という感じの暗さが急にガクンと暗闇になりました。さて、日食のピークがやってきたのです。こういうとき、言葉の通じないところでひとりでいると、面白いんですよね。来た来たキターなんて、お互いに盛り上がりを作り上げていく心理的なタイミングもなく、いきなり、来るんだからさ。
いやー、知識としては入っていたのですが、こんなに真の真っ暗闇になるとは! これが凄いんですよ。くだんの週刊誌で皆既日食が見られなかった残念無念を読みましたが、日食の醍醐味はもう、ぜーんぜん、雨でもオッケー。一生に一度たりとも、経験したことの無い、ナチュラルな「天体暗転」は、本能的にぞくっと来るような不思議な心持ちにざてくれます。それは、盛り上がる、感動、という言葉は裏腹の、なんというか「嫌ーな感じ」。不吉とか凶々しい、という感覚に近い。
奄美のレイブ方面に行かなくて良かった! と心底思いましたね。そのセッティングだと、
周囲のグルーヴで見事に感受性が”感動”一本に単純化するのは必須。やっぱ、都会を選んで正解! 安定的な文明社会にもの凄く、暴力的なものがちん入した・・・・。紋切り型では在りますが、ホントにそんな異形感があったんですもん。
真夜中の暗黒の空の中に、電飾巨大画面が煌々と照っています。ちなみに、そのときのオンタイムのCMはTOYOTAでした。日本の代理店ならば、そこにタイアップをめざとく盛り込みそうなのに、上海ではそんなことはありません。道行く車が二三発クラクションを鳴らしたぐらいで、上海の街は至って淡々と日食のそのときを迎えていたのでした。
太陽が復活していく時もヤバい。なんと言うか、演劇の照明風のつくりもの感もありつつ、あの明るくなり方の速度というのは、本の数分前に真っ暗闇を経験しているだけに、時間と場所の不整合感にぐらっ、と来ます。
そういえば、神話の天岩戸のくだりも、アマテラスが岩屋から顔をのぞかせたところがクライマックスだったし、太陽のとてつもないエネルギーのありかたは、生きるか死ぬかレベル。ホントに、暗闇から急速に開けて日常の明るさになる所の方が心理的にインパクトがあるんですね。日の出って、朝焼けの前触れがありますが、この日食開け、は、そういうのりしろ部分が一切無いんですよ。だから、怖い、という感じ、畏敬感を起こさせるのかも。
日食天体ショーが終わると、そそくさと解散するクール上海人を尻目に思いっきり急いで、タクシーでリニアモーターカーの駅まで急行。駅の外に浮浪者が座っていましたが、彼はこの日食をどう体験したのか、非常に気になりました。
だって、もう、私たちは金輪際、事前情報無しで日食に立ち会うことはあり得ないわけで、これ、ノーインフォで体験したら、どれほどの衝撃かっつーの!
最初にオーケストラを聞いた明治の日本人、最初にウニを食べた人・・・・・。
うーん、このたぐいの想像にはいつも熱くなってしまうなあ。
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