高級寿司屋のカウンターでは、「隣に座ったのがあの人」という素晴らしい偶然が起こることがあります。寿司グルメの友人たちからは、だれそれが彼女と来ていた、などという香ばしい話を聞いたりしますが、私はとんとご縁がない。
ご縁が無いというよりも、私は日常で有名人の顔というものがいつもほとんど判別できない。代々木上原のワインバーで馬鹿話にのけぞったとたん、後ろの男性と頭をガツンとぶつけてしまったことがあって、「やっ、ごめんなさい」でやり過ごしたのですが、後から彼はスマップのゴローちゃんだということが判明。ふつーのサラリーマンかと思ったよ。
さて、この日、フランス系のPRを一手に引き受けている斯界のクィーンであらせられる、瀬古敦子さんのお誘いで西麻布のK寿司にご招待されたのでした。ほぼオンタイムでその店の指定された離れの小窓を除くと、ななななんと、そこにはどーんと釣りバカのハマちゃんの姿が! そう、西田敏行さんがひとり杯を傾けている。恐る恐る入ると、なんと、瀬古さん、一番端っこに座ってた。
まあ、そういうこともあるでしょうと、つまみと瀬古さんのご実家、瀬古酒造の逸品を堪能していたら、ああた、お次に入場していらっしゃったのが、クールビューティー、天海祐希さん、そして、竹ノ内豊さん(しかし、またもこのイケメンの顔と名前が一致せず、これは瀬古さんの判断)
まるで、ビールのCMのエキストラになったような気分でありまして、瀬古さんも私も業界なれしているとはいえ、脳の聴覚野の30パーセントは西田チームに集中している始末。
カウンターの席順はというと、西田氏と私の間は二席開いているので、お互いのグループはいい距離感であったわけですが、この夜のハイライトはその後にやってきたのでした。
何気なく、例の小窓を見やると、そっそこには、このところ話題的にはマックスボンバーな人物の横画がっ・・・・。(と、この話は飲み屋話題ではここで人物あてクイズに入るが当たった人は誰もいませんいないのだ)
ヒントはポッポッポー。鼠先輩ぢゃないよ(と、すげーオヤジギャグ)鳩山由起夫氏と奥様の幸さんだったのだ。そして、なんと、鳩山氏は私の真横に座っちゃったのである。このときはまさに小沢問題で鳩山氏が党首になった直後。久々の気分転換に訪れたそうです。
さすがに大人の皆さんですから、非常に節度を守って寿司を楽しんでいましたが、そこはそれ、寿司屋のカウンターマジックというやつで、息子さんのロシア留学話を聞いたり、なんとなーく、リラックスした仲間の雰囲気。
鳩山由起夫さん、美形ですよ。文科系女子が憧れる、文科系男子の典型というか、大島由美子の漫画に出でくる教授っつーか、秘密博士っつーか。役者のような華がある。奥さんの幸さんははっきり行って、カウンターを一手に仕切っていましたね。天海さんとは宝塚の先輩後輩の関係ですから、幸さんが「あまみぃ~」なんて言うと、天海さんがびしっとした男ぶりの敬語で答えて、ヅカの伝統たる上下関係の凛々しさと美しさに、私は脳の30パーセントで身もだえしていましたぜ。
しかしながら、この夜の贅沢さというのは、この今をときめく”役者”たちの、声の饗宴を体感できたこと。現代音楽の雄、メシアンの作品で野に生きる野鳥たちの声をそのまま”音楽”に移し変えた「鳥の歌」という作品がありますが、私はこの夜、この場の寿司屋の周りのささやきのサウンドスケープをそのままま「K寿司の歌」に写譜したいね!
西田敏行さんのあの不思議な倍音がかかる声と語り口は、もうそれだけで、大原のあわび級、さすが宝塚出身の天海さんと奥様の幸さんの声は、とにかく、よく通る。話の内容はもちろん、不明だけど、天海さん、役柄と同じく、ものすごく男っぽくて気風がいい感じでしたね。
鳩山氏のおごりでカウンター全員に、「森伊蔵」がふるまわれました。そうしたら、寿司屋の大将が森伊蔵の古酒を出してきて、鳩山さん、飲み比べ。じーっと見ていたら、「飲んでみる?」って言うんで、なんと、鳩山氏と同じグラスで利き酒しちゃった! この間接キスは後で効くよ。必ずや民主党を勝利に導くだろう。なんちて。
さて、お寿司ですが、最初にネタの顔見世として、ネタ箱に魚介がまるでアルチンボルドのようなルックスで盛られている。珍しいものをいろいろ出してくる、攻め、の寿司で、こういうやりたいことがはっきりとしている店は活気をもらえます。
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