ハーパスバザー連載の「ベルばら手帖」がご縁で連絡を取り合っている、世界の(強調)西本智実さんによる指揮・演出の「ロミオとジュリエット」@すみだトリフォニーホール。ご招待を受けたので、湯山昭を誘って、久々の父娘鑑賞。西本さん、実は父の曲を子供の時にさんざんピアノで弾いており、ご自身も作曲科を出られたこともあって、ファンを公言なさっていたからの所以なのです。
連載にも書いたけれど、多分西本さんは人類始まって以来、初めての「バレリーナとしての体験がある」指揮者なんですよね。そう、彼女は中学生時分までバレエを習っており、舞台の踊り手としてクラシック音楽を身体で体験しているわけで、これはもの凄い武器なんですよね。ワルツなんかの3拍子は、例のウィーンフィルのヨハンシュトラウスの恐ろしいほどの突っ込みのごとくに、エンヤーコーラのどっこいビートの日本人には難関と言われていますが、そこの感覚を身体が知っているという点で。事実、彼女はそこのところをヨーロッパの先達たちに評価されているといいます。今回のロミジュリもエモーショナルで大ロマンチックなプロコフィエフの名曲をグルーヴィーに、かつ非常に良くオケを鳴らせるパワープレイで振り切りました。
オケが舞台を全て占め、なんと、バレエはホリゾントに浮かんだ奥行きのない高台で踊るという演出の趣向。これは非常に知的な企てで、マイムっぽいバレエ(狭いスペースなのでそうならざるを得ない)が、中世の人形芝居のようにも感じられて、バレエと音楽、今回は主客が転倒したその立ち位置を奇天烈にせず、正しく納めることに成功しています。そう、ご存じ文楽は実は人形の動きを見ながら、三味線と義太夫節を聴かせる表現なのですが、そのバランスに近い。
それに加えて、両脇にシェークスピアの電光掲示板のストーリーの一節が流れるのです。最初はちょっと盛り込みすぎかな、とも思ったのですが、それは杞憂に終わりました。というか、その文言と音楽の宛所が異様にマッチしていて、逆に感情が総動員してロミジュリの世界に入っていく、ブースターのように作用してくる。また、今回発見したのですが、このロミオとジュリエット、実は珠玉の文言に溢れている!!ものすごーく有名なストーリーなので、知ったつもりになっているのですが、これ、こんなに文学的に凄い作品だったとは。シェークスピア、本当にあなどれん。楽屋で尋ねたら、西本さんはこのテキストにもきちんと手を入れていて、全体のバランスを調整したと言うから、凄い。
でもまあ、本当にプロコフィエフの音楽がいいんですよね。音響的にも例の「モンタギュー家とキャビレット家」の中にアルトサックスがふらっと不良っぽい旋律を拭いたり、ビオラの美しいソロもある。ジュリエットのテーマの美メロ具合は、もはや、ギャンブル&ハフとか、マーヴィン・ゲイと同根。
父はなんでも、5.6年前にバリオペラ座でロミジュリを観て、「人生で初めて舞台を観て泣いた」らしい。
ということを、しきりに西本さんに言ってましたね。
来るときに違う改札に出ちゃって、線路をまたいで大回りしてやっと会場に着いたという父は、その長い?道程の最中にお腹がすいても「人生初めて、牛丼屋に入って250円の牛丼を食べた」と自慢していましたw>
錦糸町と言えば、タイ料理の名店「ゲゥチャイ」。父を帰したあと、一人タイメシ。クイティアオ・ナムトックという肉麺と菊花茶とデザートにチェストナッツのタピオカ。
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