有言実行! この言葉ほどいつも私を挫折感に陥らせるものはないのだが、今回はやりましたよ。何を?
そう、GW中の部屋の片付け+冬物衣料大整理大放出じゃ。東京滞在中のウィーンのお友達チーム、トーマスご一行を目黒「とんき」に連れて行き、野宮真貴さんと旦那の昼間さんとシティボーイズの舞台→イタメシ+狂乱カラオケを毎夜毎夜にこなしながらの大健闘だったが、開けた本日はもうぐったり。フランソワーズ・モレシャン氏も言っておったが、洋服の整理は本当に気力と体力がいる。服ひとつひとつに思い出が張り付いてますからねー。
昨シーズン見かけなかった、アナスイのスカートを発掘。もはや、トロイア遺跡発掘に燃えるシュリーマンか、高松塚古墳かってな心境。 と、そんな日に限って歯医者の予約が入っており、しかも、奥歯抜歯という大イベントだったことを今日の今日まで失念していたバカな私。 とはいえ、すでにこの奥歯ほとんど崩壊していたので、抜歯は楽々と医者も私も踏んでいたのだが、大変なことが起こってしまった。そう。麻酔の効きが異様に弱いのよ。「麻酔効かない体質ですか?」「いや、そんなことありまへん」「おっかしいなー」とガンガン追加されても、唇やあごは麻痺しているのに肝心の抜歯の要のところの感覚がしっかり残っているのだ。いてててててぇー。すべての拷問の中で歯関係は最高位らしいが、その片鱗の恐怖をはっきり感じさせていただきました。医者の話によると歯肉に炎症が残っているとそこが酸性になって麻酔がかかりにくいということらしい。そこを縫ってもらって、来週また再度トライらしいが、ダメなときは大学病院送りになる模様。ほんとかよ?! 痛む歯を抱え、これで即帰宅できるならばいいが、こういう日に限って、過酷な予定が入っている。
そう。雑誌「ソトコト」での連載「エコ飯ミシュラン」のために一路、新丸ビルの「酢重ダイニング」へ行ってメシを食わなきゃならんのだ。唇の半分はまだしびれが残っているというのに。しかしながら、食欲はそれを凌駕する。軽井沢本店があり、信州味噌と醤油がうたい文句のこの店、たしかにサバ味噌のノーブル方向の味付けはなかなか。詳しくは次号の「ソトコト」参照のこと。 この連載の対談相手、菅付雅信君と盛り上がったのは、映画『バベル』の話題。私的には、9.11以降のアメリカグローバリズム批判とネット時代の世界同時進行感覚&コミュニケーション問題を扱った映画としては、最高峰だと思う。と同時に、東京の描き方に驚いた。モロッコ、メキシコ、日本。その地を突き刺す登場人物としてアメリカ人カップルがいる。モロッコ、メキシコにおけるエピソードは、どちらかというと南北問題、そう、富めるアメリカとその対極の摩擦から来る「予測できる」物語だったのに対し、日本の登場人物設定はハンティング趣味の村上龍描くところの理想の中年セレブな男とその聾唖の一人娘という、東京と日本イメージの紋切り型からはちょっと考えもつかない設定。こういう、オリジナルなつかみはたぶん、この監督の独特な感性から生まれてもので、もう、このへんのセンスは現代文学の領域っぽい。(しかし、映画ではきちんとコミュニケーション不全の象徴に収まっているので普通の観客は安心するのだが、東京でのシーンは全体としてその意味からこぼれ落ちるものが多くてそこが魅力だったりする)独自の強固なローカル文化と西欧的近代化をなんとか両立させてきたこの三国の中でも、過剰に本国の思惑を超え、資本主義の実験地、みたいに先鋭化してもう、まったくわけがわからないことになってしまった日本、そして東京の凄まじさをものすごくよく描いていると思う。 まあ、映像感覚も凄くて、聾唖のチエコが公園でストリートボーイズとドラッグかっくらって大はしゃぎして、夜のクラブにたどり着くまでの、カメラのスピード感、とぎれとぎれの音響、そして、理解と共感から、ひとり群衆の中の孤独に引きはがされるショックまでのシークエンスは、もう、ここだけでひとつの短編音楽映画が作れてしまうほどの魅力と強さがある。
『シティ・オブ・ゴッド』のフェルナンド・メイレレスと同様、ラテン系の監督、社会派の衣をまといながら、官能と感覚を爆発させると超ド級の凄腕を見せる。 『バベル』というだけあって、「知恵と能力故に身を滅ぼす」モロッコの弟や、人間の証であり原罪である性欲の問題も、コミュニケーションの最も根本的な衝動として誠実に描かれていましたねー。 しかし、菅付君によると、ユーチューブでOprah Winfrey Oscar Specialでの菊池凛子のパロディーがガンガンアップされているそう。まー、想像するにあの「ご開帳」シーンに違いないと思っていたら、ホントにそうだった。バカですねー。奥歯抜歯と映画『バベル』。どちらも麻酔無しで傷口縫合ってことで。
最近のコメント